食品に含まれる放射性物質の新基準値が、2012年4月から適用されます。その内容は、放射性セシウムによる年間被ばくの許容上限を1ミリシーベルトに引き下げ、『乳児』『1~6歳』『7~12歳』『13~18歳』『19歳以上』の年齢区分で許容上限値を計算し、最も厳しい値を適用する。『13~18歳』『19歳以上』は男女の食品摂取量に差があることから、男女別の数値も出すと言うものです。
一般食品は暫定規制値の5分の1、飲料水は20分の1とし、新たに加わる『乳児用食品』『牛乳』は子供が被ばくの影響を受けやすいことに配慮し『一般食品』の半分としています。また今回は放射性ヨウ素やウランは食品から検出がみられないとして、基準値を設けていません。
厚生労働省が定める食品に含まれる放射性セシウムの新しい基準値を設けていません。
放射能のことが分からないから…
◆国の基準値は本当に正しいの?
◆どのくらい身体に蓄積されるの?
◆放射線の危険性がよく分からない。
◆いつまで避難し続ければ良いの?
どうやって測定されるのか、測定すれば良いのか分からないから…
◆内部被曝が心配で県内産の食品を避けてしまう。
◆線量計はどの種類をどこで買えばいいの?
◆単位がたくさんあるけど何が違うの?
◆豚肉や鶏肉は安全なの?
福島に住む私たちでさえこれだけ不安や疑問があるのですから、県外には福島全てが放射能に汚染されていると思っている方も多いかもしれません。
福の鳥プロジェクトでは、放射能から自分自身を守るために、何よりも子どもたちの笑顔と未来を守るために、食の安心安全を確保するための測定方法を専門家の協力を得ながら実践しています。
放射能のことを正しく理解し、測定により安全な数値が分かれば、不安は大きく解消されます。
日本中の福島に対する不安は、世界から見れば日本に対する不安と同じこと。福島から発信する食の安心安全への取り組みをご覧ください。
東京電力福島第一原子力発電所の事故は、日本中の多くの人々に不安を与えることになりました。ここではその要因となる放射能・放射線、関連する単位や福島の空間線量の実態などについてまとめてみました。
まずは放射能と放射線ですが、火が付いている「炭」をつかって説明しましょう。炭はそれ自体が熱(遠赤外線)を発しています。その熱を「放射線」、炭が熱を発する力(能力)を「放射能」、そして炭そのものが「放射性物質」となります。放射性物質は安定していない状態の物質で、より安定した物質になろうと変化します。そのときに放出するエネルギーが放射線の正体です。安定した物質(炭に例えると「灰」の状態)になってしまえば放射線をだすことはありません。
放射能………… |
放射線を放出する能力。 |
放射線………… |
原子核が、分裂あるいは崩壊する際に出すエネルギー。α(アルファ)線・β(ベータ)線・γ(ガンマ)線・中性子線などの粒子線と電磁波の総称。 |
放射性物質…… |
「放射線」を出す物質のこと。 |
今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、放射線についての危険性が良く取り上げられるようになりました。放射線による被曝を恐れ他県に避難したり、測定器で身近な場所を測定している人も多いと思います。そこで放射能・放射線・放射性物質についてきちんと違いを理解することが必要です。
まずは、「放射線」とは原子核が分裂あるいは崩壊するエネルギーのことであり、X(エックス)線やγ(ガンマ)線などの電磁波とα(アルファ)線、β(ベータ)線、中性子線などの粒子線の総称です。「放射能」とは、この放射線を出す能力のことを指します。そして放射線を出す物質が「放射性物質」です。ちなみに一般的に言われている「放射能漏れ」とは「放射性物質漏れ」のことで、放射線を出す放射性物質が原子力施設の外部に漏れることです。
被曝とは放射線が体にあたって吸収されたり、突き抜けたりした状態のことです。人が被曝しても、その人が放射線を発するようになったり、他の人にうつったりすることはありません。
放射線は、物質の中を通りぬける力(透過力)を持っています。この力は放射線の種類とそのエネルギーの強さによって異なります。
○アルファ線(α線)
α(アルファ)線は透過力が小さく、紙一枚程度で遮ることができます。しかし、エネルギーが強いため体内に取り込んでしまうと人体に与える影響は大きいです。
○ベータ線(β線)
β(ベータ)線はアルミニウムなどの薄い金属板で遮断できます。γ(ガンマ)線ほどの透過力はもっていませんが、エネルギーはβ(ベータ)線の方が強いです。
○ガンマ線(γ線)
γ(ガンマ)線は、粒子の流れであるアルファ線やベータ線とは異なり、1種の電磁波で電磁波の中でも最も短い波長に相当します。ガンマ線の場合は、次に述べるX線よりも波長が短く、強い透過力を持ち、コンクリートブロックあるいは鉄の板も透過する力を持ちます。
エックス線(x線)
X線はガンマ線よりは波長が長い電磁波の1種です。しかし、可視光線等と比較すると極めて短い波長であり、ガンマ線と似た特性を持っています。透過能力はガンマ線より弱く、医療用として人体の透視検査などに広く利用されています。
○中性子線
中性子線は、最も透過力が強く、水やコンクリートでなければ止めることが出来ません。アルファ線やベータ線と同じく粒子線で、核分裂の時に放出されます。放出された中性子が他の原子に吸収されるとさらに核分裂を引き起こします。この連鎖反応が起きている状態を「臨界」と呼びます。
体の外にある放射性物質からは、そのすべての放射線をうけることはありません。途中、物質でさえぎられたり、届かなかったりします。しかし、一度体内へ放射性物質を入れてしまうと四方八方に発せられているすべての放射線を排出するまで受けることになります。このことから分かるように同じ放射性物質ならば内部被曝の方が外部被曝より人に及ぼす危険性は高くなります。
放射線が人に影響をどれだけあたえるかを表す単位です。
炭で例えると、炭(放射性物質)に近づくと人体の影響は大きくなり、距離をとれば影響は小さくなります。また、炭(放射性物質)の量が多くなればおのずと影響も大きくなります。
(Sv)
生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出します。
放射線のエネルギーがどれだけ物質に吸収されたか(吸収線量)を表わす単位。物質1kgあたり1ジュール(J)のエネルギー吸収があるとき1Gyとなります。
今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故で、「ヨウ素131」や「セシウム137」などの放射性物質がよくとり上げられています。
ヨウ素は事故前でも、理科の実験や消毒薬で普通に使用され、危険なものではありません。それは通常使用されている「ヨウ素」が放射性物質「ヨウ素131」とは違うためです。
半減期とは、放射性物質が放射線を放出することで別の原子に変化して、やがて放射線を出さない安定した原子になる過程の中で、元の放射性物質の半分が別の原子に置きかわるまでの期間のことです。注意すべき事は、「半減期になると放射線を出す力が弱くなって安全になる」とはならない事。そして、半減期がくりかえされ数が人体に影響のないレベルで、限りなくゼロになるがなくなりはしないという事です。
ヨウ素131
人間の甲状腺にたまり、甲状腺がんの原因になるとされています。ヨウ素はもともと、成長をつかさどる甲状腺ホルモンを構成する必須ミネラルで、年齢が若くなればなるほど、体内に取り込まれやすい。半減期は8.02日。
セシウム137
必須ミネラルであるカリウムに似た性質を持つために、人体が吸収しやすいく血流に乗って全身を流れ、筋肉や骨に集積し、がんのリスクを高めると言う説もあります。
半減期は30.07年と長いが、体内に入ると排尿などで排出される量も多く、100日程度で半分の量になります。
成人が浴びて良いとされている年間の積算放射線量は、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準をもとに国が年間20mSv/y(ミリシーベルト)と決めています。
年間20mSv/yは、日常的に使われているマイクロシーベルトに換算すると20,000μSv/yとなります。1日では54.8μSv/d、1時間あたりにすると2.28μSv/hとなります。
1時間あたり2.0μSv/h前後は、福島県の避難区域だけでなくホットスポット(局地的に高い線量になる場所)として県内各地にあり、私たち県民はその目に見えないホットスポットに怯えて暮らしています。除染の効果は期待できますが、国の除染活動は思うように進んではおらず、子どもたちが安心して暮らせるようになるのはまだ先の様です。
私たちは一刻も早く除染が進み、子どもたちが安心して暮らすことのできる環境になることを願っています。
原発の事故以前にも私たちの身の回りには微量の放射線が存在しています。そして、それらを全く浴びずに日常生活を送ることはほぼ不可能です。
放射線は大きく二つに分けれます。一つは自然界に存在している自然放射線があります。これは宇宙からの宇宙線や鉱物などの大地から発せられて呼吸や食物から体内に取り込んでます。その量は世界平均で2.4ミリシーベルト/年間になります。(日本の平均は1.4 ミリシーベルト/年間)
内訳は、宇宙から0.39ミリシーベルトと大地から0.48ミリシーベルトの外部被曝と呼吸によって1.26ミリシーベルト(主に空気中のラドンから)と食物からの0.29ミリシーベルトの内部被曝となります
二つ目が今回の原発事故からの放射線も含まれる人間が作り出した人工放射線です。レントゲンやCTスキャンといった医療機器が発するX(エックス)線もこれに含まれます。ちなみに胸部のレントゲン撮影一回当たりに0.05ミリシーベルト、胃の場合で0.6ミリシーベルト、CTスキャン6.9ミリシーベルトの人工放射線を浴びています。
放射線測定器は、放射能に汚染された物や大気中の放射線量を調べるための装置です。 放射能を測定する目的により、いくつかの種類や特徴があります。
空間線量を計測できるものとしてハンディータイプのサーベイメータや空間線量計と呼ばれる測定器があります。このタイプは軽量で持ち運びに優れていますが、上位タイプのものと比べ精度が低く、空間線量を測るのが主な用途のため食品を正しく測ることができません。
一般的なハンディタイプの線量計で食品の放射線量を測ることはできません。ではどうしたら食の安全を確認できるんでしょうか。私たちは、測定方法について専門家の意見を聞いて、平成14年の厚生労働省の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(以下測定マニュアル)を基準として取り入れました。
※2012年3月31日までの基制値
現在、食べ物に対しては暫定規制値がもうけられています。その値によって、食べ物に含まれる放射能がそれを摂取する私たちにどれだけ影響を与えるかは、放射線の核種ごとと取り込み方によって決められている線量係数(測定マニュアル参照)を用いて求められます。
現在食品に含まれる放射性ヨウ素と放射性セシウムに関する暫定規制値は以下の通りです。
ヨウ素131(Bq/kg) |
飲料水 |
牛乳・乳製品 |
野菜類(根菜・芋類を除く) |
魚介類 |
300 |
300 |
2000 |
2000 |
セシウム134・セシウム137(Bq/kg) |
飲料水 |
牛乳・乳製品 |
野菜類 |
穀類 |
肉・卵・魚・その他 |
200 |
200 |
500 |
500 |
500 |
※2012年3月31日までの基制値
暫定規制値の単位となっているBq(ベクレル)は放射性物質が持つ放射能(の強さ)を表わす単位です。放射性物質がどのくらい放射能を持っているかを、1秒間に崩壊する原子核の数で表します。シーベルトと同様、炭を例にとって例えると、温度の高い炭のほうが温度が低いものよりも高い能力(放射能)をもつということになります。
CPSとは1秒間に測定器が数えた放射線の数を表す単位です。発生する放射線は一定ではありません。
※通常、サーベイメータの表示は、一定時間の移動平均値が表示されます。
※CPSではなくCPMとある場合は[count per minute]で1分間の測定値を意味します。