土湯温泉の、のどかな温泉街、歴史ある伝統工芸品や素朴な人々…。古くから湯治場として親しまれてきた土湯の魅力をお届けします。
土湯温泉街の周辺には、美しい自然がたくさんあります。
とくに北部に位置する男沼(おぬま)・女沼(めぬま)・仁田沼(にだぬま)がある女沼地区は 春の花、夏の新緑、秋の紅葉と高原ハイキングを楽しめるコースに なっています。 温泉街から、女沼に向かう途中にある『つつじ山公園』は、 5月中下旬にかけて丘一面が真っ赤になるツツジの名所です。 美しいツツジに囲まれて、女沼の美しい景観も楽しめる公園です。 |
つつじ山公園 |
また、男沼や、仁田沼とも遊歩道で繋がっており、
春から夏に掛けて思う存分自然を満喫できるハイキングコースになっています。 今では、気軽に自然を楽しめる女沼地区ですが、戦前までは手付かずの森林でした。 その山を切り開き、開拓してきた人たちがいました。今回はその中のお一人にお会いしてきました。 |
戦後の開拓でできた高原ハイキングコース 今回お話を聞いたのは、女沼地区で茶屋を切り盛りする 安齋ヒサ子さんです。 「つつじ山公園だけじゃなくてね、 昔はここは道も何もなくてね。ただの山だったんです。 この道路ができたのも、ずっと後になってからのこと。 私、20年間、吾妻小富士の山道を歩いてたんです。」 (ヒサ子さん) |
安齋ヒサ子さん(86歳) 女沼茶屋の女将さん |
現在は「土湯・里山夢づくりプラン」として 菜の花畑など里山の美しい景観が作られている |
女沼地区の人たちは、 厳しい自然の中でも、常に夢と誇りを持ち、かつて酪農や稲作、養蚕などを営んでいました。『つつじ山公園』が公園として整備されたのも、その開拓の一環でした。 |
つつじ山公園から臨む女沼の景観 各ビューポイントには、ベンチが備え付けられている |
昔から山つつじが美しく群生している場所があり、 ヒサ子さんのご主人たちが「これはきれいだから残して おこう」と『つつじ山公園』として丘の整備をし、たくさんの人が気軽に楽しめる「国立公園」にしようと働きかけたそうです。 |
「花がきれいに咲くとたくさんの方が見にきてくれる。 山を切り開いて、電気を引いて、道路を作って。 |
|
ここから始めなければ・・・ ヒサ子さんが、この土地に来たのは今から64年前。22歳の時です。 「私はね、いったんどん底に落ちたから、 震災で苦労されている方の気持ちがよくわかるんです。」 (ヒサ子さん) 満州で終戦を迎え、いわば裸一貫で、この地にたどり着いたそうです。 「満州の会社で事務員として勤めていました。 それが急に日本に引き上げることになって-。 貯金も何もおきっぱなし。丸裸になってここへ来たんです。 本当に何もなかった。 どうしても、『ここから始めなければ』なりませんでした。」 (ヒサ子さん) |
|
「私はね、ここにきた被災者の方にこう言うんです。
『私が満州から引き上げたとき、貯金も持ってこれず、
国中がヒィヒィ言ってた時だから、もちろん支援も物資もなにもなかった。
それからみれば、自分は恵まれているんだ!そう思って、がんばってください。』
ヒサ子さんの励ましの言葉の中には、漠然とした応援だけ ではなく、自らの経験からくる力強さと思いやり、 そして 今、何をすべきかというヒントがありました。 戦後の混乱の最中、力強く生きてきた先人たち。 前を向いてさえいれば、やるべきことが見えてくるのかもしれない、 ヒサ子さんのお話からそんなことを考えました。 |
|
女沼地区へのアクセス ※土湯温泉街から徒歩60分・車で10分~15分 |
大きな地図で見る |